モクサアフリカ講演会を聞いてきました その二


会場で売ってたモクサアフリカ手ぬぐい。
来られなかった友人の分も購入。
マーリン•ヤング先生と伊田屋幸子先生の
モクサアフリカについての講演
に行ってきました その二。
後半。
ここからが本番です。
モクサアフリカはどういうきっかけで始まったか。
モクサアフリカは2008年、
現代医療の恩恵を受けられないエリアの
HIVおよび薬剤耐性のある結核菌に感染した人達に対して
お灸による免疫力向上を図るためにイギリスで発足したチャリティ団体。
世界の貧困層と富裕層の格差は年々広がりつつあり
世界の半分の富をごく少数の富裕層が所有している一方で
1日1.25ドル以下で生活する最貧困層が存在する。
二酸化炭素排出量が多い国ほど気候変動の影響を受けず、
排出量の少ない国ほど気候変動で経済的ダメージを受けるという皮肉な事実。
貧困層にとって医療費は深刻な経済負担です。
「Could acumoxa help fill gaps while richer countries close their borders?」
データだけならパンフレットに
載っている話なんだけど
自分の耳で生の声を聴くと
彼らの活動の臨場感が違う。
心が動く。
ウガンダのマケレレ大学でのランダム化比較実験では
足三里への連続施灸で
結核菌にもAIDSウィルスにも
非施灸群に比べて優位に感染力が低下。
この論文は間もなく英語で発表されるそうです。
素晴らしい…
日本ではなかなかこのような比較実験を
人体で行うのは難しく、
鍼灸師の社会的地位の低さもあって
今までにほとんど論文がない。
モクサアフリカでの結果が即
日本で広く受け入れられることはないかも知れませんが
外堀から埋めて行けば
いつか医療の常識が変わるかも知れない。
自己施灸がレトロなケアとしてではなく
ごく当たり前のプライマリーケアとして一般化すれば
高騰する日本の医療費を
わずかながらでも減らせる可能性に繋がるかもしれない。
日本はまあ、医療が充実しているので今は除外するとしても、
貧困国での効果が認められれば
さらに募金も楽に集まるでしょう。
薬と比較して格段に安いですし。
驚いたのは、北朝鮮は実は
かなりの結核患者を抱えているらしく
モクサアフリカのスタッフが(赤十字を通して?)
お灸指導に行ったというお話。
しかも、習いに来るのは一般人でじゃなく
病院の責任者レベルだそうです。
優秀な上に取り組み方がものすごく真剣だから、
アフリカで看護師さんに
2日くらいのトレーニングで教えている施灸の仕方を
半日で覚えてしまうと。
日本人やアメリカ人は入国できないらしいですが
韓国には鍼灸文化があるけれど
北朝鮮にはないということなのでしょうか。
日本式の施灸が平和の架け橋になったりしたらいいなあ。
今年の春から金沢大学とモクサアフリカの共同研究が始まるそうです。
何の研究かは触れられませんでしたので
これは後日確認したいと思います。
「私は20年 日本の鍼灸を学んだが
透熱灸(糸状灸)がこのように発展しているのは日本だけ。
酒や茶のように、お灸も
日本独自の文化として誇れるものだと思います」
(透熱灸=直接艾を捻って肌の上に載せるお灸です。)
ネパールのように、
現地に艾工場を建てる事を最終目的としないのかと思いましたが
同じように考える方が、質問してくださいました。
蓬は寒い冬と暑い夏のバランスで上手く育つらしく
日本の北陸の蓬から取れる艾が最も良質で、
寒い冬のないアフリカでは栽培が難しいとのこと。
南アフリカで栽培実験したところでは
持ち込んだヨーロッパ産 アメリカ産 中国産 日本産の蓬のうちアメリカ産と日本産の生育は悪くなかったものの、
ネパールでのような良質な蓬には至らなかったようです。
蓬なら何でも良いわけではなく、
葉の裏側の繊毛が艾になるので
繊毛が少ないと艾にならないわけです。
沖縄に行った時、沖縄ソバに生の蓬をたっぷり載せた薬膳的メニューがありましたが
あの蓬では直接灸をする艾を作れないということですね。
そうか~
そしてもう一つ。
火傷と治療効果の問題。
残念ながら棒灸、台座灸、直接灸の
比較データがないので
灸によって効果が異なるかどうかは不明とのこと。
(モクサアフリカでは直接灸です)
ほんのりした温かさでも劇的な効果があったりすると
お灸が苦手な人には朗報ですが
なんとなく、足三里だけでやっていくのであれば
棒灸より直接灸の方が
免疫力アップ効果は高いような気がしてしまいますね。
火傷に関しては
水泡が出来てしまった場合は場所をずらして施灸を続けますが
なんと、衛生状況が劣悪なアフリカの環境下で
結核やAIDSに罹っている免疫力が低下した人への
施灸にもかかわらず
火傷からの感染事例は皆無!
お灸には副作用がない、
と自信を持って言われるのはこれも大きいですね。

この記事を書いた人

Saori Takano

「ここに来て良かった!」と心から言っていただける治療室を目指しています。
鍼灸治療は人対人の相性が重要だと思っています。
来院するかどうか迷っている方は
ざっと眺めていただいて参考にしてくださいませ。