映画 BENDA BILILI!

最近はアフリカ音楽が好きで、
治療室でもかけていたりするが
行ったことがないし縁もないところなので
各国の場所も名前もイマイチわかっていない。
良い映画、という話を聞いて予備知識ゼロで
BENDA BILILI!を観に行った。
なんだこれは、という凄い映画だった。
鳥肌立ちっぱなし。
BENDA BILILIとはリンガラ語で「内面を見よ」という意味らしい。
メンバーの何名かはポリオの後遺症による身障者で
身障者用のシェルターや動物園、
段ボール(トンカラ)の上で寝る路上生活者!
ポリオ根絶への願いや路上生活者への差別、段ボール生活など、
机上の空想ではなく実生活から生まれた歌詞に心を打たれる。
映画の字幕を見なければ歌詞の意味は全く理解できない。
しかし何を歌っているかわからなくても、楽曲がいい!!!
彼らが売れたのは障害者バンドの物珍しさという理由だけではないことがわかる。
車椅子から飛び降りてビートを刻む姿にびっくりするが
なんといっても1弦を弾きこなす少年、ロジェ。
彼は障害者ではないが、
「これで生活していけるから僕は引ったくりをしなくていい。」
と言い切るその姿、
空き缶を改造した質素な楽器を操り
驚くほど多彩な音色を奏でる確かな腕前、ただただ尊敬。
(サトンゲという楽器らしいが、原型がコンゴにもともとあるのか、彼の独創楽器なのかが謎)
そしてBENDA BILILIのメンバーの話だけではなく、
背景で展開される出来事がどれも非常に印象的。
自転車を改造したバンドメンバーの手漕ぎ車椅子から始まって
バンドの傍らで、子供の段ボールを奪おうとする大人
(あきらめたのはカメラクルーを意識してか?)、
山手線のラッシュなんて可愛いもんだと思わせる
人とモノでぎゅうぎゅう詰めの列車に乗り切れずに
「死んでしまうよ!」とか叫びつつも
車体の外にしっかり目的の駅までぶら下がり続けて無事着地する人、
「神が創った未知の国 ヨーロッパ」について語る子供達、
砂埃を上げながら腕だけで縦横無尽に移動する障害者の逞しいサッカー姿・・・
これが、撮影から10年も経っていない現実の映像。
東京とキンシャサのあまりの違いに頭がくらくらした。
日本には物が溢れすぎ、コンゴには少なすぎ。
しかしモノに貧しいことは不満ではあっても不幸に直結しないのが
人間社会の複雑で救いがあるところで。
なんと言っても、リーダーのリッキーが尋常でなくポジティヴで、
彼の発する一言一言が、絶対にこの状況から抜け出してみせるという力強さと
現状を嘆いてばかりじゃない明るさに満ちていることで
タイトルこそバンド名になっているけれども、
単なる人気ミュージシャンのドキュメンタリーではなく
貧困にあえぐ人達全てに捧げる、希望に満ちた映画になっている。
CDとこの映画の成功でメンバーは今ではどん底とは無縁の
プロのミュージシャンとしての生活をしているはずだが
彼らが今後も評価され続け、路上を出ても良い曲を生み出し続けるように、
そして周囲の貧しい人々にも恩恵があるように願わずにはいられない。
こんな人たちが現実にいるんだという事実、
観た人間の心を真に揺さぶるストーリーに久しぶりに出会った。
BENDA BILILI! お勧めです!!!
車椅子のストリートロッカーズ ベンダ・ビリリ

この記事を書いた人

Saori Takano

「ここに来て良かった!」と心から言っていただける治療室を目指しています。
鍼灸治療は人対人の相性が重要だと思っています。
来院するかどうか迷っている方は
ざっと眺めていただいて参考にしてくださいませ。