初診の時は、ほぼお辞儀の状態でカートを押してきた彼女。
脊柱管狭窄自体は、鍼灸マッサージで良くなるわけではありません。
それに伴って出る辛い症状も、全てを緩和するのは難しい。
だから、私の仕事は彼らが日常生活で挫けないように励まし続けること、精神的に支えることも重要な要素の一つだと思っています。
「小豆島に行って醤油の蔵とオリーブの林を見たい」という話は一昨年から聞かされていましたが、
「こんぴらさんにお参りしてみたい」と言われたのは今年。
ご家族は仕事もあり、なかなか一緒には行ってくれない。
じゃあ付き添いますから一緒に行きましょうか、
ということで、彼女の猛烈なトレーニングが始まりました。
毎週の鍼灸の他に、理学療法士による個人指導のリハビリ、さらに「KITAJIMAQUATICS」に基づくスイムトレーニング通い。
手押しカートを使うのをなるべくやめてポール2本を使ってノルディックウォーキング風に歩行すること三ヶ月、
ついにこの日を迎えました。
羽田空港から香川県の高松空港へ、空港でレンタカーを借り、翌朝10時に金刀比羅宮参詣道へ。
名物「灸まん」の看板下からスタート。
鍼灸師なら必ず気になる「灸まん」。
寄ってお味見したいところですが、今日は忙しいのだ。
ゆっくりと一歩ずつ上がっていきます。
一歩ずつ、確実に。
しばらく上ると疲れて足が上がらなくなってしまうので柱があるところでは寄りかかり、
無い場所では折りたたみ椅子を出して
段の途中で座って休憩してもらいました。

少し休めばまた歩けるので、
上る、止まる、を繰り返して

御本宮
ついに785段を上りきって御本宮にお参りできました!
心願成就 おめでとうございます!!
せっかくの機会なので、一人で奥社の厳魂神社も参拝してきました。

彼女のところに早く戻らなくてはならないので
小走りで往復しましたが、1368段の達成感。
本宮の黄色い御守りと共に、奥社の天狗御守りも買いました。
この後、本宮から下り始めていた彼女と合流しましたが
「買わなかったけど家族から黄色い御守りを買ってきて欲しいと連絡が来た」との事・・・
もう一回行ってきますよ、と133段を上り返して買ってきました。
今の自分にはそれが簡単にできる、ということにありがたさを感じます。
帰りもゆっくり降りましたが、
当然のことながら下る方が彼女の膝には負担で
登り口に戻った頃には足が攣って歩けなくなってしまいました。
これはどこかで車椅子を調達しないと宿まで戻れないかしら…と危惧しましたが、
しばらくうどん屋さんで休憩し、
なんとかレンタカーを停めた駐車場まで歩けました。
一重に、「絶対に自分の足で785段上ってお参りしてくる」と決意してそれを貫いた彼女の精神力の賜物です。
道ゆく人からは「こんぴらさんのご加護ですね」と言われました。
確かに!
付き添いのご褒美は、「オーベルジュ・ド・オオイシに宿泊」です。



部屋の屋上で夕陽を眺めていると少々の疲れは吹き飛びます。


私にも彼女にも大満足の旅となりました。
また来られますように。