幻年時代

0円ハウス、0円生活。
トイレは共同じゃない方がいいし、お風呂だって毎日入りたいし
いつでもお湯が出る調理場も欲しい。
だから「モバイルハウス」は現在の日本人の大多数には現実的ではないとは思いつつ
それでもこの人の着想が好きだ。
その坂口恭平氏の自伝的?なエッセイ?
「幻年時代」。
この人はスケッチも上手い筈だがこの本には挿絵がない。
それが一層、読み手の個人的体験との共鳴を呼び起こす。
少なくとも自分はこの本のおかげで色々なことを思い出すことができた。
1ページごとに湧き上がってくる感情やモノの記憶は
きっかけがないとなかなか噴出してこないもので
この手引書があれば私も「自分史」みたいなものが書けるんじゃないかな?と勘違いするほど。
そして、そういえば私もいつも右手で息子の左手を握っているなと思いながら
自分はもはや「かあちゃん」の存在になってしまっているのであり、
文中で坂口氏が言うところの「管理体制下」を作ってしまっているのではないかと
密かに嘆いてみたりする。
いまさら子供時代に戻りたいとは微塵も思っていないけど
「少年」はやっぱり眩しいなあ。
日常に余裕がなくなってしまったら、スタート地点を思い出すためにまた読もう。

ワタリウムの展示に行かなかったことをいまさら激しく後悔。
また坂口氏の作品に触れる機会があったら次は絶対行きたい!

この記事を書いた人

Saori Takano

「ここに来て良かった!」と心から言っていただける治療室を目指しています。
鍼灸治療は人対人の相性が重要だと思っています。
来院するかどうか迷っている方は
ざっと眺めていただいて参考にしてくださいませ。