家にある「にんじん だいこん ごぼう」という絵本と
似た絵柄だなと思って手に取ったら同じ作者だった。
「にんじん だいこん ごぼう」も、
お風呂場がレトロなんだけれども、
こちらも失われつつある昭和の雰囲気が。
というか、我が家の台所とうたこさんの台所がとても似ている。
作者もこういうお家で育ったのかな。
「うたこさん」は、風貌的には60代後半から70代前半と思われるが
どうやら一人で暮らしているらしい。
(息子に、うたこさんはいくつに見えるかと聞いたら「よんじゅっさいくらい?」だって。おーい!)
家の中の食器たちが
ある日風邪を引いて寝込んでしまったうたこさんに
おかゆを作ってあげる、というお話なのだが
こまごまとした食器たちの種類の多さと
うたこさんを想う姿にキュンとする。
キッチンの椅子三脚が、よく見るとセットではなくて
一脚ずつバラバラという描写の芸の細かさもすごい。
「こういうのが好きなんです」と一目でわかるテイストとは無縁の、
年を重ねる毎に少しずつ買い足したり、
壊れて入れ替わったりしていきながらの結果の昭和的なモノの豊かさ、
統一感のなさに、我が家との共通点を見出して親近感をおぼえる。
そして、作者はモノに対する愛情が深い人なんだなあとあらためて感心する。
いや、それは確かにかつて私にも存在した気持ちなんだけれども、
最近それほどまでに大事にしているものって何かあったかな。
雑巾まで売っている世の中、
整理術と称して「捨てること」を推奨する本も売れてるし
「ときめかない」ものは処分するそうだし、
モノが安くなりすぎて、「愛着をもって大切に使う」という行為が
なんとなく薄れていると自分で思う。
「うたこさん」も時には一人暮らしの孤独感にさいなまれたり
悩みがあったり将来への不安があったりするのだろうな、
ティーカップが3つということは3人家族だったこともあるのかしら、
などと思いながらページをめくってしまう自分、
「この本面白い」と息子も言っているけれども、彼とは全然違う視点で見ている。
うたこさん (クローバーえほんシリーズ) (2011/09/30) 植垣 歩子 |