石垣先生の「本を読んだだけで先生のパワーが伝わってくる」という感想を読んですごく読みたくなって、
昨日早速お借りしました。面白くて一気に読んでしまった。
鍼灸師としてのテンションを上げてくれる本です。
今まで複数の患者さんから、「テレビで背中に何百本も鍼を打っているのを見たのだけど
ああいうやり方の方が効くのか」と聞かれて「一度に何百本ですか!?」とにわかには信じがたく、
中国の先生かと思っていたのですが
(沢山の鍼を打つというのは中国人の先生には珍しくない手法なので)この本を読んで解決しました。
その「有名人に何百本も鍼を打つ先生」とは、この竹村文近先生のことだったのです。
先日、昨年11月にある鍼灸師の方が百日行という仏教の相当厳しい行を
見事満行したという新聞記事を目にして、
こういう方の鍼灸治療を是非一度受けてみたいと思いましたが、
竹村先生も相当なもので、1年の間に5000m級のヒマラヤの山々を3回も
ボンベなしで歩いた経験があるという強靭な心身の持ち主らしい。
何故何百もの鍼を打つことが必要だと先生が考えていらっしゃるのか、
この本を読んですんなり納得しました。
あくまでも竹村先生がご師匠から伝えられたやり方に
ご自分の経験をプラスして達した境地なので私には真似できませんが、
「古い結合組織を出来るだけ多く切り、そぎ落とし、ダムを決壊させる」という表現が新鮮。
「凝りのひどい人などには、先端を荒くつぶした鍼で繊維をゴリゴリ切ってやると、
あまりにも気持ちがよすぎてよだれを垂らしたりするほど」・・・!!!
ゴリゴリ切る!
鍼灸を全く知らない方の目にこの一文がどう映るのか、興味深いです。
「私の鍼は痛い」
「強い鍼で、一度身体をバラバラにする。そして、修復してから身体を組み立て直す。それが私の治療だ」
病んだ身体は気や血の滞りを前提としてバランスをとってしまっているので、
鍼でまずこの滞りを取り除き、
「悪いところははっきりと悪いと感じることのできる」身体の状態にする。
だからその修復過程で症状がかえって悪化したり、
今まで痛みの無かった場所に痛みが出現したりするが、
ひるまずに治療結果に対する自信とパワーを持って強い治療をする。すごいです。
普通の治療院だとかえって痛くなったりした場合、
事前に説明しておいても理解を得るのは簡単ではないと思うのです。
だから「痛くない・熱くない・副作用はほとんどなし」をうたう治療院が多いし。実際、私も初めての方には
「お灸は怖くないですよー、そんなに熱くないですよー」というところから灸施術を始めていますし(苦笑)。
もっとも、竹村先生の鍼灸院は患者さんも有名人が多いようですから、
人より抜きんでている分、治療に取り組む姿勢も並ではない患者さんばかりでしょう。
新潮社というメジャーな出版社だし、「タモリさんも驚いた」という大きな帯がついていて、
一般にあまり売れない鍼灸関係の本の中では売れ筋に違いありません。
発行が昨年のようなので、今も竹村先生の治療を受けたいという人の問い合わせが出版社に殺到しているだろうと思いますが、
この本を読んでこの治療を受けようという覚悟と気合のある方なら、
逆にどんな治療を受けても治るのでは?とも思います。
とはいえ30分かけずに250本の鍼を的確に打つという竹村先生の治療、
是非受けてみたいものです。
アプローチの仕方は異なるけれども、
その人の持っている自然治癒力を最大限に引き出して健康になって欲しい、
という願いは鍼灸に関わる人間皆共通のものです。
高地巡礼も行けないし百本の鍼も打てない私ですが、
竹村先生のような気魄を持った方と同じ業界に身を置いていることを真摯に受け止め、
精進したいと思う年頭でした。
読んでいるうちに百会のあたりがむずむずしてきて、
思わず自分に1本打ちました。
4番0.23mmの、先生が使っている太い鍼とは比べ物にならないかわいいものですが。
しかし、セイリンの鍼が一箱100本入り。
1回の治療であれを全部使っても足りないとは・・・
朝一番のお弟子さんの仕事は箱から鍼を1000本出して包装を剥くことかー。
あらためて驚嘆。
私も疲れたりイライラしたりするとすぐ頭皮が硬くなるので、
本当は頭に2,30本打った方がいいかもしれない。
昔自分の頭に沢山打ってみたことがありますが、
自分では均等に打つのが難しかったです。
久しぶりに今晩試してみるつもりです。
追記:
開業前に勤めていた頃の日記です。
この本を読んだ当時は「打ちすぎ!」と驚きましたが、
今は美容鍼で顔だけで100本くらい打つのも普通になりましたので
全身250本も、
ああ、そういうやり方もあるかもね
くらいの感覚に変わりましたね。
10年経つと本当に色々なことが変わるものです。
祐天寺 きよら鍼灸院